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「お恥ずかしながら、生まれてこの方友達はペットの亀しかいなかったものですし、恋などもしたことはさっぱりありませなんだ…で、ですから、こうも大きな気持ちを想い想われされて、驚いてしまいました。」
「見事な桜でございます。…かつて、桜の樹の下には屍体が埋まっている、と宣った物書きがおりまして。人の血を吸いあげて桜が美しく咲くのなら、僕の死体は桜の木の元に埋めていただけると嬉しいです。…おやお怖い顔をなさる、そんなお顔も素敵ですよ」
「僕の知らないものばかりをあなた様はお持ちなのですから、なんだかずるいです。…ふふ、だからこそあなた様のお側に居たいと思うのです、そうでしょう?」
「あなた様のところにいれば、僕ができないこともできるようにしてくれるような気がして、期待してしまうのです。僕に踊りを教えてくださいませんか?お餅つきもしてみたいのですが、あなた様のそばならできたり、しませんか?海には連れて行ってくださいますか?飲めなくなるまでお酒を飲んで、花と話を咲かせたりはできませんか?」
「昨晩は申し訳ありません、酒が入って興奮してしまって、要らぬことまで口走っていたら恥ずかしい限りです…。ほとんど他者に話したことの無い気持ちなものですから、忘れていただければ、と…」
「……うう…僕、どうなってしまうのだろう…これはなんなんだ、むかむかする…心臓が…あの方のことを考えると胸焼けを起こすなんて…」
「いいえ、…いいえ、おやめにならないでくださいませ、あなた様の思うままにして欲しいのです」
「どうか、その…あなた様さえよろしければ、おそばに、居させてください…僕を、恋女房にして頂きたいのです…」
「この世界に来てはじめの頃は、どなたかに喰われて死んでしまうのだろうかと思っていたのです。ええ、そんなことはないと今ならば言えますが…それでも僕は、いまでも、あなた様になら、丸呑みにされても構わないと思っていますよ」
「たとえ果てが地獄であろうとも、あなた様がお望みならばどこまでも。萼はお側に居させていただきます。」
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作者名:佐藤める | 作成日時:2023年4月15日 0時