行ったり来たり行き止まり

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「ていうか、ユンギさん何してるんですか？」


"アメリカに居たんじゃないんですか？"と喉まで出かかったが、綿密に情報を調べてるって誤解されたくなくてやめた。


「今日の舞台挨拶に出てた俳優と仲良いから、近くにいたしちょっと寄っただけ」


あーそういう事。
すんなりと納得した。
どの俳優か、女優は二人いたけどその二人のどちらかの事なのか、ミーハーな好奇心。
勿論、聞く度胸はない。


「じゃ、帰って寝たいから行くわ」


マスクの中で欠伸をしたユンギの右手が力無さげに小さく揺れた。


「気をつけて帰って下さいね」


眠そうだし周りに友達やSPの姿はなさそうで、ユンギの背中にそう言うと小刻みに頷いたのが見えた。
私の事を無用心と言ったけれど、ユンギもユンギだ。

縦横無尽に行き交う人の中にユンギが紛れて見えなくなって


「今の誰？」


入れ違いでドユンが戻って来た。
もうすっかり見えなくなったユンギが立ち去った方を見ている。


「隣の人」


手に持ったままの携帯を上着のポケットに入れて答えた。


「隣の人？なんで隣の人がAの携帯使ってたの？」


入れ違いかと思ったのだけれど、ドユンは私が思うより少し早めにトイレを終えていたらしい。
話してる様子を見て割り込まないようわざわざ遅く登場したんだ、と。

だから'それはね'と言う言い出しと共に斯く斯く然々と、でも手短に話した。
ドユンは'へぇ'と頷いて


「じゃあもう名前も分かったんだ、隣の人の」


痛い所を突いてきた。
"やってしまった"とまでは思わなかったが、名前を聞かれたら何て誤魔化そうかとは思った。
でもドユンは名前を聞いてくる事はなくて、かわりに


「、いつの間にそんな芸能人と仲良くなって」


と、感心してるのか呆れてるのか、若しくはどちらでもないのかよく分からない言葉で締め括った。

仲が良いか良くないかは私だけでは判断し難いところだが、ベンチからやっと立ち上がって


「まぁ…食べ物交換するくらいの仲にはなったよ」


そう答えた。
どんな仲なのかよく分からなくて、自分で言ってて笑えた。

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