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その声は私の物じゃない。
ドアを開けたそこにいた、さっき写真立ての中にいた人だ。
ユンギの元彼女の。
「あ…あの、ここって…」
戸惑いの表情で部屋とドアと私の顔を見ている。
単純に"ヤバい"という言葉だけが頭に浮かんだ。
「あ、いや!ユンギさんの家です、私荷物頼まれただけで、受け取るように!」
そのせいで言葉がバラバラだ。
「あの、今ユンギさんまた居なくて、また明日か明後日とか…に帰って来ると思うんですけど」
とりあえず誤解が生まれないなら何でもいい。
思い付いた単語を拾い集めて口にしているだけだが、目の前の女の人は私の言葉に納得してくれたのか
「…そう、なんですね、また居ないんですね…」
と、長い髪を耳に掛けつつ頷いてくれて一旦胸を撫で下ろした。
もう靴も履いてる状態な訳でいつまでも家主不在の玄関に留まっていられないし、やっとユンギの家のそこから一歩外に出てドアを閉めた。
今日も相変わらず誰もいない静かな通路に、私と元彼女だけが微妙な空気の中にいる。
「…じゃあ、私はこれで」
もうここにいる必要がないという事で、軽く頭を下げてそう言ったのは私。
だってこの人はユンギに会いに来ただけだし、私はユンギのお使いをしただけだから。
今日もどこか寂しそうというか影を背負ってるというか、そんなこの人に対して私が言える事も出来る事も何もないのだ。
「あの」
なのに、自分の部屋のドアノブに手をかけた私に元彼女が口を開く。
「こないだ、ユンギに荷物渡してくれたと思うんですけど…何か言ってたりとか…」
その時のユンギの表情が過ってしまった。
悲哀とも取れる表情をしたり、満月の下で懐かしそうにTシャツを開げて眺めたり。
それを表す様に写真立てがあったり。
「…何も聞いてないんですけど」
私が出来る事、あった。
「ユンギさんの部屋に、お二人の写真がありました、それくらいしか言えなくてすみません」
さっきより少し深めに頭を下げてから、そのまま自分の家の中に入った。
元彼女さんの表情や纏う空気がどうなったかは分からない。
確認なんかする前に逃げるように部屋に入ったから。
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かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時