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こんな美味しいヤンコチ、家じゃなくても私の手じゃ作れない。
そんなやや複雑な心境の私と、もう何本も空の串をお皿の上に並べたユンギが口をモゴモゴ動かしていて。
「こんな店知ってるなんて、やるじゃん」
複雑なんて思う必要なかったんだ、って簡単に私の心を掬い上げる言葉を自然に言った。
食事の片手間とはいえ、鶴の一声とはこの事だと感心する。
たった一言でファンの心を左右させられる事より、私がすっかりユンギのファンになったんだなという方を強く感じた。
二人分にしてはやや多かったヤンコチも、私が持って来たおかず達も全て綺麗に食べ終えた。
「いいですよ、片付け私がやりますから」
「なんで?二人でやった方が早く終わるのに」
「…罪滅ぼしです」
'罪滅ぼし?'とユンギは眉間に皺を寄せたが、直ぐに'あ'と串を捨てて空になったお皿をシンクに置いた。
「こないだ酔って寝た"罪滅ぼし"だ」
わざわざ口に出して言わなくてもいいのに。
頷きもしなかったが食器を洗う私の横顔にそれが出ていたのかユンギが肩を揺らして笑っている。
「罪滅ぼしするなら別の形でしてくれればいいんだけど」
「何ですか別の形って、またトッポッキ作るとかそんなのは罪滅ぼ」
私の言葉がそこで止まってしまったのは、ユンギの手が私の肩に乗ったからで。
いや、それだけじゃなかった。
ボヤけて見えてしまうくらいの距離にユンギの顔があって
「何だと思う?」
低く囁くような声が私の全身に響く感覚に襲われたからだ。
ユンギは何処を見てるんだろう。
私の目か、鼻か、頬か、それとも_____
ーーー♩
「、誰か来た」
ユンギの手が肩から離れた。
それと同時に近くにあったユンギの顔も。
インターホンの音に救われた。
水を出しっぱなしにしていた事に気付いたのはそうなってからで、やっとそれを止めた。
今日のユンギはファンサービスが多過ぎる。
心臓がいくつあっても保ちそうにない。
玄関に向かったユンギが戻る前に、残り僅かとなった洗わなければならない食器達を急いで洗う。
洗ってさっさと帰ろうって。
泡だらけの食器を流そうと水を出す直前だった。
ユンギが向かった玄関の方から、私の物じゃない甲高い声が聞こえたのは。
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かむ(プロフ) - サマンサさん» 彼には平然と煽ってもらいたくてこうなりました😂 (3月27日 19時) (レス) id: 03d417d136 (このIDを非表示/違反報告)
サマンサ(プロフ) - 煽り上手なユンギ痺れます...! (3月27日 17時) (レス) @page43 id: 950212af01 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - 苺あめさん» こちらこそ目を通して頂きありがとうございますㅜㅜ少しのんびり更新ですがにはなってますが是非最後までお付き合いいただけたら嬉しいです! (3月26日 12時) (レス) id: e587d3099d (このIDを非表示/違反報告)
苺あめ(プロフ) - かむさん、ユンギのお話をありがとうございます。ユンギと隣の彼女の関係が出会ってから急激に近くなって、でも元カノも出てきたりして、この先の展開が楽しみで仕方ありません。毎回、更新を楽しみにしています。これからも頑張って下さい。 (3月26日 10時) (レス) @page36 id: 3780d68ff4 (このIDを非表示/違反報告)
かむ(プロフ) - にゃんさん» わーありがとうございます🥹そしてユンギペンさま…ご期待に添えられるかわかりませんが、良ければ最後までお付き合い頂けたら嬉しいです🥹 (3月21日 9時) (レス) id: 40531361f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かむ | 作成日時:2024年3月20日 20時