行ったり来たり行き止まり

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芸能人も恋愛するのかな。

人間なんだしある事はあるんだろうけど。
私達一般人よりは確実にハードルが高いだろうし、困難も多いだろう。
それを分かっていながらも、好きという気持ちが止められなくなるんだろうか。

ユンギも、そうなのだろうか。
だとしたら相手は一体どんな女なのだろうか。
やっぱり同業者、女優とか＿＿＿

ワイワイと騒がしかった同期達が帰った後、洗い物をしながら考えた事はそれだった。

特別な意味はない。
ただ単にどんな形であれ関わった芸能人はユンギが初めてだから、どうなのかなって。
好奇心ってやつだ。


ーーー♩


全員分のグラスが食洗機に並び終わった時にインターホンが鳴った。
誰か忘れ物だろうか。
さっき帰ったばかりの同期の中の誰かだと思って、何にも気にせずただドアを開けた。


「ｩえっ！？」


また早とちり。
自分のせいなのだけれど変な声が出てしまって、慌てて口を抑えた。
もう手遅れなのは承知の上で。


「いくら何でも不用心過ぎ」


無言で玄関のドアを開けた事を冗談っぽく咎めたのは、そこにいたユンギだった。


「いや、友達かと思ってつい…」


「そんな事だろうとは思ったけど、さっきまで楽しそうな声聞こえてたから」


「あ…もしかして五月蝿かった、ですか？」


「そういう意味じゃなくて。別に隣の声が時々聞こえるくらいどの家にもある事じゃん」


後頭部辺りをかいたユンギの目は右往左往しているが、言葉は淡々としていて嘘の様には聞こえなかった。
それから"それにしても何の用だろう"という点が気になり出す。

でも私がそれを問う前にユンギの方から'あのさ'と。


「俺、いつもチキン余らせるから、今度からAがいる時、半分貰ってくれない？」


玄関のドアに手を掛けて、そんな事を。
しかも、こんな時だけあれだけ落ち着かなかった目が私を真っ直ぐ見下ろしていて。


「そうしてくれると助かるんだけど」


低めの声でそんな事を言われて首を横に張ったりNOと言える女がいるのだろうか。
勿論私は言えない方の女だ。


「別に、構わないですよ」


可愛くない言い方になってしまったが、しょうがない。
だって、通路や自分の手や、私の顔の横にあるドアに掛けられたユンギの手とか、そんなのに忙しくなく目を動かしていたから。

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